手ぶらで電車に乗ってほしい。
訳あって、私はポケットに財布だけ入れて手ぶらで電車に乗った。
とっても身軽だ。気分がいい。
小田急線はそこそこ客がいたが、そんなことも気にならないくらい気分がいい。
格好も身軽だ。サンダルにショートパンツ、チチカカで買ったお気に入りのだるだるのTシャツ。見た目だけなら探検に出かける少年みたいな感じ。
本日の東京は暑すぎず、心地いい。
行く先は決まっていたがそれまで、時間があった。電車でこれから何をしようか考えた。その車両に乗っている人をくるっと見まわした。もちろんスマホを睨めつけている人も寝ている人もいつも通りいるが、思っていたより本を読んでいる人が多かった。
私も本を読もうと思った。
町田で電車から飛び降りて、たまに行くお気に入りの本屋さんに行った。
本屋さんは7階くらいにあるから、途中でいい匂いのする洋服屋さんの前を通って、この前一緒に来た先輩を思い出して、1人でにやにやした。それくらい機嫌がいい。
本屋に来た。読んでみてと言われた本があった気がしたが、思い出せないからとりあえず、目につく本を手に取った。いくつか手に取ったがぴんと来ない。ふらふら歩いているとわくわくする本がある。その隣はもっとワクワクする。といったわくわくの流れを見つけた。この流れに沿って行けば、わくわくの根源が見つかると直感で感じた。
あった。
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発売日 : 2017-04-21
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この本の置いてある棚全面に釘付けになったが、隣を見てもわくわくしない。
何度もみた。何度もこの本を手に取って、棚に戻した。
そして「読んだ方がいい本」を探しに行った。
発売日 : 2012-07-28
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これはおすすめしてもらった本だったな。読んだ方がいいんだろうな。
そう思いながら通り過ぎる。
新書とか読んだ方がタメにになるんだろうな。そう思いながらパラパラいろいろな本をめくる。でも、さっきのわくわくがやっぱり忘れられなくて、わくわくの源本棚に戻った。
新潮社
発売日 : 2017-06-30
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この本と最後まで迷って「いつか別れる。でもそれは今日ではない」を買って、袋をぶらぶらしながら本屋を出た。
スタバがあったから、ドリップコーヒーを頼んで、席で本を開いた。
心がくすぐったくて、頭がよくさえて、思考がすごい速さで変化した。何かにこの思考を吐き出したくて、スマホを開いたけど、充電がなかった。そして紙に書くのがよかった。だからお店を出て、無印良品のお店に向かった。plazaでもよかったけど、無印良品のペンとノートが好きだったからそっちにした。
小さい無地のベージュのノートとネイビーのペンを買って、本屋の袋に入れた。
今すぐにでも吐き出したくて、お客様アンケートを書くための台があったから、そこでどうでもいいことを汚い文字で書きなぐった。
もう出発した方がいい時間だから、急いで小田急に乗った。走ってホームまで行ったからか、本を読んだからかすごく心拍数が上がって、頭はさっきより冴えている。
電車に乗っているときも、本とノートを開いて、立ちながらだから書きにくいけど、それでも、書いて読んで、書いて、読んでを繰り返した。ふと、おなかが減って周りを見ると、みんなはかばんを持っていた。手ぶらで電車に乗っているのは私だけだった。自分を特別に感じたけど、同時に孤独にも感じた。あまり寂しくはなかった。
乗り換えでホームにいるときに、1人だけかばんを持っていない人を見つけた。仲間だと思ったけど、どうしてかばんを持っていないのか考えてしまった。かばんがないのかもしれないし、私と同じ理由かもしれないし、かばんを持たないのが気持ちいいから好きなのかもしれない。最後の理由にわたしは賛成だ。確かにとっても気持ちがいい。
夜に目的地の日本橋についてからも、気分はやっぱりよかった。
夜の風がTシャツをゆらゆらさせて、通り抜ける。風が気持ちいい、良き夜。
スケジュールに余白を作れるのと、かばんを持たないで電車に乗ることは少し似ていると感じた。今この気持ちよさをうまい言葉に言い換えることができないのが残念だけど、私だけのお気に入りの気持ちだからずっと言葉にしないのもありだと思う。
この文を読んでくれた人はやってみるとわかるかもしれない。おすそわけするね。